2017年8月25日金曜日

クローズアップ広縁


ひろ−えん【広縁】
1.幅の広い縁側。
2.「広庇(ひろびさし)」に同じ。
コトバンク kotobank.jp より


我が家のリビングには広縁と呼ばれる謎のエリアが存在する。完成した姿は一般的にいう広縁とは違った雰囲気に仕上がっているけど初期のプランでは「旅館の客室の窓際にある低いテーブルと椅子が置いてあって景色を眺めて寛ぐエリアみたいな感じ」というイメージで設計されたもの。

格子戸の向こうがそれ。最近の写真がなかった。

さらにさかのぼって元をたどれば、そこはサンルーム的な洗濯物干しスペースだった。
虫が大嫌いで宙を舞うものすべてに悲鳴をあげる妻。床を転がる毛玉にも悲鳴をあげる妻。食事中でも蚊を見たら部屋全体に充満する量の殺虫剤を撒き散らす妻。そのとなりでいつもそれを見ていたぼく。そんなぼくらの新居には、室内物干しスペースが必要不可欠だった。

設計さんの描いた1stプランでは2Fのいちばん明るい場所、玄関の真上に位置する場所に、リビングとは切り離すかたちで正方形のサンルームが用意されていた。

その1stプランを見ながらの最初の打ち合わせ。回り階段が直階段になり玄関エリアへ移動したことから、そのサンルームは間取り図から速攻で姿を消した。

しかし物干しスペースはどこかに作らねば。この時は洗濯機やバスルームが2Fにあったから物干しスペースは2Fになければならなかった。

そこでぼくらが考えたのは「兼ねる作戦」。屋内のどこかに物干しスペースを併設する作戦。

たとえば、

バスルームに物干しスペースを兼ねる。

洗面所に物干しスペースを兼ねる。

和室に物干しスペースを兼ねる。

廊下に物干しスペースを兼ねる。

寝室に物干しスペースを兼ねる。

物置きに物干しスペースを兼ねる。

そして

リビングに物干しスペースを兼ねる。

ぼくらが選んだのはリビング。基本的に生活の中で洗濯物が視界に入ってくるのがイヤという妻にとって、選択肢はバスルームか洗面所しかない。でもバスルームや洗面所は狭い。洗面所は多少広めに設計したがそれでも物干しスペースを兼ねるほどではない。

リビングは生活の中心。家にいる時間の多くはリビングで消費される。洗濯物が視界に入るのがイヤなら選択肢から外すべきだけど、リビングはなんといっても広い。我が家で最も広い空間はリビングだ。ここに物干しスペースを設けて必要に応じて目隠しセパレートすればいい。

洗濯物を干している間はセパレート。リビングはちょっと狭くなる。洗濯物がないときは開放して広々リビングに戻る。位置的には本来ならベランダやバルコニーが設置されるところだから陽当たりなどは問題ない。大きめの窓を横長にどかーんと設けたら完璧。

と、思ったけどここでひとつの不安。

セパレート取ったら本当に広々リビングに戻るのかってこと。セパレートは簡易的なツイタテ的なやつじゃなくて、ガッツリ引き戸にするつもり。だって閉じたときに全くの別空間にする必要があるから。

そうなると引き戸の両端に戸袋がいる。いや、戸袋じゃなくてもいいんだけど構造的に壁があったほうがいいって話。
2F間取り図

上の間取り図でいうと「本だな」と「手洗い」の左側の壁。この、なんていうのかな、袖壁でいいのかな、わからんけど戸袋になるこの壁は外せない。垂れ壁や敷居も邪魔になるけど、垂れ壁は引き戸をハイドアタイプに、敷居は吊り戸にすれば回避できる。しかしこの壁だけは外せない。

 格子戸閉じた。

この両端の壁がある以上、広々リビングに戻すことはできないかも。もし広々リビングに戻らないんなら開放したときも別空間としてエンジョイできるようにしないと。

ほら、旅館の客室の窓際にあるじゃん。低いテーブルと椅子があって、オセロとかポーカーとかするところ。部屋とは障子で仕切れてさ。外の景色を眺めたりできてさ。上階にあって室内だけど縁側みたいな領域。あー、広縁っていうんだ。そうそう、その広縁的なイメージで捉えたらいいと思う。この空間は。ただ広縁と呼ぶには窓の位置が高すぎる気がするけどそれはプライバシー的な懸念もあるし窓を下げると外観がダサくなるからこのままでいいね。いまいち広縁っぽくはないけど広縁的な空間ってことで使っていく方針でオッケー。

その後、間取りが激変。キッチン以外の水回りが1Fに移動。寝室も1Fであることから、衣装部屋兼クローゼット兼物干しスペースが新たに1Fに設けられた。






広縁、いらなくなっちゃった。

いらなくなったけど2Fにキッチン以外の水栓がないことに気づいて広縁の端が空いてるからそこに手洗い作ろうということに。また、本棚作るの忘れてたことに気づいて広縁のもう一方が空いてるからそこに本棚を作った。

この広縁に、洗濯物は干さない。干さないけど、ここが広縁であることは変わらない。広縁から眺める景色なんて、そんなものはじめからたいしたものは見えないじゃないか。ぼくらはリビングからこの広縁を眺めるんだ。そしてほっこりするんだ。

この家づくりを思い返して。

おわり



Aug 25, 2017
waguri






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【撮影】和栗のお宅訪問